精油の化学

ここでは精油の化学についてご説明しますが、ごく簡単にまとめてありますのでご了承ください。

より専門的な内容を理解するためには、有機化学や精油の化学について書かれている書物等をご参考になさってください。

 

精油は芳香分子の集合体

精油は、植物の花、葉、果皮、樹皮、、種子、樹脂などから抽した芳香分子の集合体で、

主に炭素(C)水素(H)酸素(O)からなる、有機化合物です。

元素のわずかな並び方の違いにより、様々な香りが作り出されます。

 

全ての植物は、水と二酸化炭素、太陽の光から光合成=一次代謝を行い、生育に必要なブドウ糖と酸素を作り出します。更に、一部の植物は二次代謝という働きを行い、独自の成分を作り出します。(コーヒー豆のカフェインや、ゴムの木のゴム、タバコのニコチンなど。)

精油の芳香物質もこの二次代謝産物にあたり、数十から数百種類の成分を含有していますが、植物ごとに含有する成分や量が異なるため独自に特徴のある香りと効能を持っています。

 

化学成分を理解する必要性

精油について、日本では香りを楽しむものというイメージが一般的ですが、有機化学の観点からどのような成分がどのくらい含まれているのかに着目することで、それぞれの特徴を理解して効果的に使用することができます。

 

また、自然のものだから安全である、とすることはできず、一般的に流通している精油には禁忌事項や注意事項のある精油も沢山含まれています。それらを把握し、安全に使用するために、含有成分を知ることはとても重要です。

 

さらに、植物学上同じ植物であっても採取地や時期などによって成分に違いが生じることがあります。

それらを特徴成分により分類しているケモタイプと呼ばれる精油について、正しく扱うことができるようになります。

例:ローズマリー CT=ケモタイプ

・Rosmarinus officinalis  CT(Cineole)オキサイド(酸化物)類の1.8シネオールを多く含む

・Rosmarinus officinalis  CT(Camphora)ケトン類のカンファーを多く含む

・Rosmarinus officinalis  CT(Verbenoen)ケトン類のベルベノンを多く含む

 

精油の成分分類

精油の成分は大まかなグループに分類され、グループに共通、また個々の成分固有の薬理作用があります。グループ名と主要成分、特徴、多く含まれる精油や注意事項をご紹介します。

 

◇モノテルペン炭化水素類

【主要成分】α-ピネン、β-ピネン、リモネン、δ-3-カレンなど。

【特徴】多くの精油に含まれる。柑橘果皮や針葉樹の精油に特に多い。優れた抗菌、抗ウイルス、抗炎症、鬱滞除去、コーチゾン様作用など。

【精油】オレンジ、レモン、サイプレス、パインなど。

【注意事項】皮膚刺激があるので濃度に注意。揮発しやすい。酸化しやすい。

 

◇セスキテルペン炭化水素類(−)

【主要成分】カマズレン、α-ジンギベレン、β-セスキフェランドレンなど。

【特徴】優れた抗炎症、抗ヒスタミン、抗アレルギー、鎮掻痒作用など。

【精油】カモミール・ジャーマン、タナセタム、ジンジャーなど。

【注意事項】酸化しやすい。香りが強い。

 

◇セスキテルペン炭化水素類(+)

【主要成分】セドレン、ヒマカレン、ブルネセンなど。

【特徴】リンパ強壮、静脈強壮、鬱滞除去作用など。

【精油】シダー、アトラスシダー、パチュリーなど。

【注意事項】酸化しやすい。香りが強い。

 

◇モノテルペンアルコール類

【主要成分】リナロール、ゲラニオール、テルピネン-4-オール、シトロネロール、l-メントールなど

【特徴】比較的毒性が低く乳幼児や高齢者も安全に使える。肌に有効な成分が多い。優れた抗菌、抗ウイルス、抗真菌、免疫強化、強壮作用など。

【精油】ホーウッド、ゼラニウム、パルマローザ、ラベンダーなど。

【注意事項】ゲラニオールには子宮収縮作用がある。

 

 ◇セスキテルペンアルコール類

【主要成分】サンタロール、セドロール、パチュロール、ビリジフロロールなど。

【特徴】比較的毒性が低く乳幼児や高齢者も安全に使える。強壮、刺激、エストロゲン様、鬱血除去作用など。

【精油】サンダルウッド、シダー、パチュリー、ニアウリシネオール、セージなど。

【注意事項】ホルモン依存性の疾患時は使用注意。

 

◇ジテルペンアルコール類

【主要成分】スクラレオール、マノオール、セドロールなど。

【特徴】強壮、刺激、エストロゲン様作用など。

【精油】クラリーセージ、ジャスミンなど。

【注意事項】ホルモン依存性の疾患時は使用注意。

 

◇ケトン類

【主要成分】カンファー、ツヨン、β-ジオン、ベルベノン、l-メントンなど。

【特徴】粘液溶解、脂肪溶解、胆汁分泌促進、去痰作用など。神経毒性や肝毒性がある。

【精油】セージ、ペニーロイヤル、ローズマリー、タナセタムなど。

【注意事項】高濃度、長期間では使用しない。てんかん、妊婦、授乳中、乳幼児、老人、高血圧の場合には使用しない。

 

◇テルペン系アルデヒド類

【主要成分】シトロネラール、ゲラニアール、ネラールなど。

【特徴】抗菌、抗ウイルス、抗真菌、抗炎症、鎮痛、、鎮静、血圧降下、消化促進作用など。

【精油】レモングラス、リトセア、ユーカリ・レモン、シトロネラ・ジャワなど。

【注意事項】皮膚刺激が強い。高濃度、長期間の使用は避ける。酸化しやすい。

 

◇芳香族アルデヒド類

【主要成分】ケイ皮アルデヒド、クミンアルデヒド、ベンズアルデヒドなど。

【特徴】抗菌、抗ウイルス、抗真菌、免疫刺激、神経強壮作用など。

【精油】シナモンカッシア、クミンなど。

【注意事項】皮膚刺激が強い。高濃度、長期間の使用は避ける。酸化しやすい。

 

◇フェノール類

【主要成分】チモール、カルバクロール、オイゲノールなど。

【特徴】精油中で最も強い抗菌、抗ウイルス、抗真菌作用を持つ。鎮痛、麻酔、免疫強化作用など。

【精油】オレガノ、クローブなど。

【注意事項】皮膚刺激が強い。高濃度、広範囲の使用は避ける。

 

◇フェノールエーテル類

【主要成分】アネトール、チャビコールメチルエーテルなど。

【特徴】鎮痛、抗痙攣、筋肉弛緩、エストロゲン様作用など。

【精油】アニス、バジル、ナツメグ、フェンネルなど。

【注意事項】高濃度、長期間の使用は避ける。

 

◇オキサイド(酸化物)類

【主要成分】1.8-シネオール、ビサボロールオキサイドなど。

【特徴】抗ウイルス、去痰、抗カタル、粘液溶解、免疫調整作用など。

【精油】ユーカリ・ラディアータ、ユーカリ・グロブルス、ニアウリ、マートルなど。

【注意事項】ユーカリ・グロブルスなど一部の精油は刺激が強く乳幼児には不向き。

 

◇エステル類

【主要成分】酢酸リナリル、酢酸ボルニル、蟻酸シトロネリル、アントラニル酸ジメチルなど。

【特徴】神経性の鎮静に優れている。花の精油に多く含まれている。鎮痛、抗炎症、血圧降下など。

【精油】ゼラニウム、ジャスミン、プチグレン、マンダリン、ヘリクリッサムなど。

【注意事項】ウインターグリーンやバーチに多く含まれるサリチル酸メチルを除き、作用は穏やかで毒性は低い。

 

◇ラクトン類

【主要成分】クマリン、フロクマリン類、フタリド類など。

【特徴】分子量が大きいので精油には微量含まれる程度。粘液溶解、脂肪溶解作用など。

【精油】シナモンカッシア、ベルガモット、レモン、セロリなど。

【注意事項】フロクマリン類には光毒性があるので、塗布後紫外線に当てないようにする。